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    それはさうだ、永いことにちがひない、と房一はゆつくりと歩きつゞけた。多分、彼は彼で、自分のこれからの生涯を、その計りがたく、茫漠とした行手を見ていたのだらう。

    「相沢さんも見えないな」

    「途中から帰つて来たんだよ」

    彼女はその表情を少しもくづさずにすつと引き下つたが、間もなく帰ると、

    「誰かと思つたら――」

    「いや」と、喜作は相変らずきつぱりと、煩うるさがりもせず答へた。

    「いつこちらへお帰りでしたか」

    病人は眼を開けて、しばらくこの息子とはちがふ医者を眺めた。軽い不審と失望の色が浮かんだやうに見えたが、すぐに閉ぢて、かすかにうなづいた。

    今度は正文の方で答へなかつた。そして急に苦がい顔になつて、ぢろりと薬戸棚を見まはしただけで母屋おもやの方へ帰つて行つた。

    と、道平は明かに盛子に気兼ねをしているらしかつた。

    と、一向にそんなことを知らない房一が云つた。

    すると、道平の半ばひきつゝた表情の中には、又あの悦ばしさが、かうして歩いて来たことを人に見られるといふ満足が、ゆつくりと、何だか紙のずれるやうな工合に上つて行つた。

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